白内障治療薬について
2003年6月29日掲載
我が国では数十年前より、白内障予防の点眼が用いられてきました。
これらは、基礎的研究にて白内障予防効果ありと認められ、1980年代に臨床的にデータも集められ、臨床的にも有効とされたものです。ただし80年代のことですから、画像診断、コンピュータ技術も未発達で、効果判定は肉眼での判定となったものです。当時ではこれ以外に方法がなかったのです。
最近になって厚生労働省が証拠に基づいた医療、EBM―Evidence based
medicineを謳い、各科にEBMによるガイドラインの作成を要請してきました。証拠としては診断、治療等についての、現在の医療技術レベルでの厳密かつ客観的評価が要求されてきましたが、今なら可能な白内障の水晶体混濁の画像化数値化も、前述の通り、80年代の技術ではかなわなかったため、肉眼的な結果判定をせざるをえなかった以前のデータが“科学的ではない”と却下されてしまいました。これが「科学的根拠がない」とされた理由ですが、これは決して「治療効果がない」を意味するわけではありません。
私がここで開業して10年、多賀先生の頃から20数年、白内障に対して点眼、漢方薬を処方してまいりましたが、長期的に治療されている患者さんの視力はやはり出るのです。
現在の技術で評価ができないから科学的ではないといわれようと、国の承認を得た治療薬ですし、保険も通りますので、患者さんのご希望があれば処方を続ける所存です。ただし、いつも診療室で申しています通り、進行をゼロにするものではありませんが。
稲山眼科医院
院長 稲山 貴子